心の治療の実際・18「心の治療雑感 :相火論から見た心の治療」

(4) 相火論から見た心の治療
前会長の福島先生の時代に「相火論、心包三焦論こそが東洋医学の真髄であ
る」というお話をしばしば拝聴いたしました。中国の中世において行われたとい
う相火論の論争、存在は耳にしていましたが、その詳細に関しては定かではあり
ませんでした。いろいろ調べてみますと、この相火論こそが心の治療の説明の基
礎になるものであると感じています。(あまりまとまった資料というものがなく、
いろいろな本に断片的に書いてある相火論をまとめてみると概ね以下の図の様に
なるようです。本当にいろいろな議論がある様で、これと定まったものはないよ
うです。ですからこの図も絶対に正しいという様のものではありません。まずは
相火の循環に絞って簡単に書いたものです。)
天から心火が降りてきて人の命が始まります。心火が相火となって下焦に下
り、腎陽となります。腎陽が下焦からユラユラと立ち上がり五臓六蹄を暖めなが
ら上焦に至ります。上焦に熱が溜まりすぎない様に腎水は三焦を通って常に水液
の交通を主っています。そして、心、心包の経絡は勝脱経等の力も借りながら、
上焦に立ち上がってきた陽気を下焦に押し下げることで上焦をさわやかにすると
共に、押し下げられた陽気はまた腎の陽気として再利用されます。この体内にお
ける陽気の循環を促すのが心の治療と捉えています。
もちろん肺からもたらされる清気と牌胃からもたらされる水穀の精微も日々
我々に新たな陽気を与えてくれています。体の中に入った陽気の多くは排世や体
表からの発散によって体外に去っていくわけですが、いろいろ書き込むとわかり
にくくなるのでそれらも省きました。
中国の歴代の医家にはこうした相火論に関する色々な話が伝わっているようで
す。テキストにも書きましたが、臓器の名前には皆肉月がついている。心だけそ
れがないのは他の臓器が皆母から与えられたものであるのに対して心だけは天か
ら与えられたものだからである。古人はその由来を知るが故に天地の陽気が最も
盛んなる夏至の日の空を見上げ、細い三日月と三つの小さい星が心の字を形取っ
ているのを見つけ、心と名付けた。
心臓は胎児の時にもいち早く発生し鼓動を開始する。肺による呼吸も脾胃による飲食もない胎内において既に激しく鼓動し続け生命を支えている。この事実を持って心だけは天から与えられた特別な臓器としての地位が与えられたのかも知れません。
天が君火を降ろす事は、人が関与できません。腎陽が臓器を温めながら登って
来ることは熱の自然な運動であって衰えることはありません。腎陰を励まして三
焦を通路することは既に本会では理解され広く行われている治療です。ただ、
心、心包の経絡を用いて積極的に上焦の熱を下焦に押し戻し、もってこの天然の
陽気の循環を助けることだけが理解が不十分であり、治療に応用されることが少
なかったと、そういう理解をしています。