鍼灸聚英にみる心の病症と配穴07:まとめ

ー平成24年8月 漢方鍼医会夏季学術研修会における発表よりー

問:隅田先生は臨床的に心虚証を証明され、臨床で、使っていらっしゃると思うので
すが、そこに至るまでのこと、「心虚証」という考えに至った経緯を教えていただき
たい。

隅田:そもそもは、本治法の際、主証としていきなり「心、心包」を触るということ
は以前から一部の会員の中で行われていました。私も以前にある先生から治療してい
ただいたときに心包から腎と行き、とても結果が良かったことがあり、それ以来、強
く関心を持ち実践してきました。その先生によると「こういう事もあるということ
さー。あはははー」ということで、やはり「心に虚無し」の呪縛が強いのか、それ以
上理論的には踏み込んでいないご様子でした。テキスト編成の際に、中国では「心に

虚無し」いう言葉が無いこと。中国古典では心、心包の経穴を積極的に用いているこ
と、国内の古典鍼灸家にも心虚証の存在を既に認めている人が結構いることなどが話
題となり、本会も、いつもでもこのままでは良くないだろうと思い発表に至りまし
た。昨年の発表に関しては、詳しいことは『漢方誠医30号』に掲載されておりますの
でご覧下さい。
まとめ
治療をしていて一番多いのは、腎との絡みだと思います。池田政一先生は、心は
「腎虚心実」しかないと言われていました。心独自のものよりも、やはり腎との関係
だと思います。加齢とともに腎虚になり水が枯れてくると、自然と体は熱を持ちやす
い状態となり、水火の交わりが出来なくなり、熱は益々高ぶった状態になります。こ
のように、徐々に熱症状になります。今までの本会の理解だと、「これは陰虚であ
る。虚熱が上がっている。」と判断します。そして、腎をどうするのか、肝血を潤
すのかというような判断をしていたと思います。

しかし、色々な文献を読んでみると、この方法だと片手落ちの印象があります。熱が上がって来ているという時は、その熱に対処する必要があります。清熱をするという直接的な対応も必要だと思いま
す。薬方の方では、そのような薬は非常に多くあります。誠灸でそれを行うならば、
心を潟す方法です。ですから、今まで心熱ということが分かつていても、それは腎水
を補えば自然と治まるということで、腎で心をコントロールしていました。しかし、
心を潟すことで、その熱が腎陽を補っているように腎をしっかりさせていきます。そ
して、加齢とともに衰えてきた腎の陽気も活発になると思います。その結果、腎水も
補われるということです。

そのカギは、「心は腎を支配する」ということです。原文
では「心主腎」とあります。この考え方が、実際の臨床の中では多いと思います。病
証としては、腰が痛い、足が冷える、頻尿などに対しては腎の弱りである。一方で胸
に熱を持っていて、眠りが浅い、頭痛などのように熱の症状を現している。この熱と
いうのは、冷えに比べて「これは心の熱である」とか「この熱は肺の熱である」とか
判断がしにくいものです。このような症状は、どこの熱でも現れる症状だからです。
熱は上に上がってくれば熱なのです。どこから上がってくるかとか、関係なく悪さを
するわけです。非常に分かりにくいですが、足が冷える症状や腰が痛いといった腎虚
の症状に対して、心から手を付けたり、心だけに手を付けた方が良い場合が、非常に_
多く隠れていたと思います。私が調べた結果では、この「心主腎」は『素問』『霊
枢』『十四経発揮』にも書かれていないもので、私の臨床の中での実感として特徴的
なものだったということを強調しておきます。