鍼灸聚英にみる心の病症と配穴06:心虚証

ー平成24年8月 漢方鍼医会夏季学術研修会における発表よりー

問:心虚証という治療法があってもいいと、確かに思う。しかし、今までの経絡治
療に置いては、当日の説明では江戸時代から心虚証は避けられていたのに、脾虚証と
して心包経を一緒に用いるなどして治療はされていたことになります。対処できてい
なければ、その時代からも心虚証は採用せざるを得なかったはずです。それを今、心
虚証として取り上げる意味をもう一度説明してください。
隅田:我々は古典治療を標榜しているとはいえ、実際には常に過去の治療を見直し、
時代に即した新しい形に誠灸をリフォームし続けていると認識しています。不足を補
い、誤りを正すのに何も遠慮することはありません。もしも、過去の治療を改善する
必要がないというならば、鍉鍼のみによる本治法、気血津液論による弁証、森本鍉鍼
も手にすることはなかったのではないでしょうか。また、誤解もありそうです。江戸
時代に心、心包の経穴はあまり使われていないようだ云々というのは、私が『鋪灸緊
英』と『誠灸重宝記』を読み比べた時にそう感じた、或いは「何だかそんな気がす
る」という程度のことです。本当のところは全く分かりません。そう、ご承知下さ
い。しかし、例えどうであれ『鍼灸緊英』を読んで感じて頂けたかと思いますが、過
去数千年の鍼灸家達は、心、心包の経穴を実に様々な病に使用してきました。それ
が、今回の発表で一番大切なことかとも思います。本会の治療に心虚証を取り入れる
ことは、決して過去を否定することではなく、むしろ大きな意味での古典誠灸の大道
への回帰となるのではないか、と捉えています。そして、私が理事会で「心虚証を公
式に認めて貰いたい」といったのは、そうすることで心虚証の研究が進み、より良い
治療体型の完成が近づくと考えたからですし、理事の皆さんからもこれといった反対
がでなかったのは、諸先生方も同じ気持ちだったからではないか、と思っています。