鍼灸聚英にみる心の病症と配穴04:出血症状

ー平成24年8月 漢方鍼医会夏季学術研修会における発表よりー

問:出血症状というのは、心との病理関係ではどのような病理考察をされますか。
隅田:私の考えでは、やはり熱との関連性を考えます。過度の熱が入ると出血しやすい傾向に
なります。鼻血や吐血であれば、肺を中心とした呼吸器系に熱が波及していると捉え、吐血で
あれば胃に熱を持ち過ぎていると捉えることができます。
さらに、婦人科の出血や大小便の出血も腸以下に熱が波及していると捉えます。江戸時代
の日本の本では、「心、心包」はほとんど使われていません。日本の誠灸師が「心、心包」

を使わなくなったのは、随分古いのではないかという印象を受けます。それで
も、出血症状に対しては「心、心包」のツボが羅列されています。例えば『誠灸重宝
記』でもその傾向があります。「心、心包」のツボは、出血症状に対して外すことの
出来ないツボだったようです。

問:心と肺は相剋関係にあり、相剋治療が当てはまるのではないかと話し合いをし
ていました。相剋調整の治療は、本会ではあまり行われておらず、本会流でいえば剛
柔治療が当てはまると思いますが、隅田先生はこのことに関してどのようにお考えに
なられますか。
隅田:これは、五行で理解する考え方と五行を外す考え方との違いがあると思いま
す。この呼吸器の場合は、症状に対してのツボの使い方だと思います。馬王堆漢墓か
ら出てきた書籍は『素問』や『霊枢』以前の書籍ですが、その中に「両手を交えて茫茫喘咳咳す」という症状が書かれています。これは、心の是動病として書かれていました。
しかし、『素問』『霊枢』においては、肺の是動病として書かれています。このように、
同じ文章が心から肺に移っています。このことに関して『素問』『霊枢』以前
は、肺と心の病理があまり分かつていなかったのではないかと言われています。しか
し、現在我々が使っている心包経を呼吸器の病気に対して使っていたという単純な捉
え方で良いと思います。そういった、中程度以上の呼吸器病には、積極的に使われて
いたという単純な捉え方で良いと思います。

 

問:「心と心包」がなぜあるのか。「心と心包」を使い分けるきっかけがありますか。
隅田:先ほどの馬王堆の話ですと、『素問』『霊枢』以前は十一経絡しかなかったわけ
です。十一経絡しかなかったのを、だれかが1つ足したわけです。現在、我々が心包
経として使っている経絡が経として使っている経絡が、当時は心経だったわけです。そして、我々が心経として
承知している経絡が、古代にはなかったのです。ですから『霊枢』の中でも、繰り返
し心の原穴は「太陵」と書いてあります。これは、1970年代になって古い文書が出て
きたら、古来の経絡は十一経絡しかなかったわけです。当時は、現在我々が使ってい
る心包経が心の経だったわけです。だれかが1つ足したわけです。11を12にしたので
す。11ではキリが悪いわけです。単純な医術だったところに、色々な古代思想、が入っ
てきたわけです。陰陽理論が入ってくる。五行思想、が入ってくる。八卦が入ってく
る。そして、12という数字が入ってくるわけです。古来中国の中では、時間と空間を
12で区切ったわけです。ですから、方向も12方向。時間も12の時間です。1年も12か
月。そして、経絡も11ではキリが悪いため、だれかが12にしたわけです。そのため、
最後に現在我々が承知している心経を入れたというわけです。