鍼灸聚英にみる心の病症と配穴03:精神の異常

-平成24年8月 漢方鍼医会夏季学術研修会における発表より-

このような、マラリアの熱病やそれ以外のあらゆる熱病に「心、心包」は広く
使われていたということが分かります。これらのことから、古来の械灸が「心、
心包」に求めた主な作用は清熱作用です。あるいは、熱を下に降ろす作用と言っ
て良いかと思います。

②心は君主の官であり精神の異常、神経症状に異常が出ます。例えば、発狂、健
忘、急に声が出なくなりしゃべられない、真正の痴呆、癲癇、急に気が狂う、
狂って走る、発狂したら高いところへ登り歌を歌い、服を脱ぎ棄てて走る、など
など色々な精神症状があります。心は神を主るとありますから、心が乱れること

は精神が乱れることです。『肘後歌』では、「幽霊が見えているかのように意味不
明なことを喋って、寝汗をかけば、間使へ鍼してスッキリする」とあります。ま
た『百症賦』では「間使は、声が出ずに口ごもり、言葉が停止して遅いものを治
す。」とあります。このような、重篤な精神の異常に「心、心包」 が使われてい
たということです。
③心が発病すると憂鬱となります。心の感情は喜びです。喜びは心を傷つけ、恐れ
は喜びに勝ちます。とにかく、喜びや恐れや悲しみといった感情の不正常と
「心、心包」は結び付けられています。例えば、うつ病、躁うつ、パニック障害
のような発作的なものもあります。心は、虚しても実しても異常が精神に出ま
す。感情のケアは代替医学へのニーズが高いので、古来の誠灸からそのような要
請に応えてきたということは、現代の誠灸にとっても心強いものだと感じます。
④心というのは、当然、心臓のことですから、現代医学的にみると循環器のことで
す。ですから、心痛や心臓がドキドキするといった一連の心臓の症状は、昔から
「心、心包」と結び付けられていたことが分かります。

⑤呼吸器の異常と「心、心包」の関係が、調べてみて一番意外でした。心経の流中
の項では、「心系には二つある。一つは肺に上がって通じ、肺の両葉聞に入る心
系。もう一つは、肺葉から下がり、後ろへ屈曲し、背骨の裏の細絡と繋がって、
脊髄を貫き、腎と通じる心系。」とあります。これは、浅野先生の解説によると
肺動脈であると説明されています。解剖学でも、非常に太い血管が肺と心臓に繋
がっています。また、もう少し細い肺静脈も繋がっています。古代の人たちも解
剖をして、そのような心と肺が一体になっていることを調べたわけです。ですか
ら、肺が熱を持てば心に響いていくし、心に熱を持っと肺に伝わってくるという
わけです。したがって、肺経のツボといっしょに「心、心包」のツボも使われて
いるわけです。