鍼灸聚英にみる心の病症と配穴02:マラリア

-平成24年8月 漢方鍼医会夏季学術研修会における発表より-

こうした先生方が昭和初期に鍼灸処方の基礎を学ぶべく、「まず『鍼灸
緊英』を読むべし」となったのはそういうわけで、ごく自然な選択であったことと思
います。この本を読むことで五臓の生理病理は無論のこと、歴代の鍼灸医がどのよう
な病気を扱い、どのような処方を行ってきたかが理解できるようになっています。し
かし、先に述べたように彼らが漢方医によって既に「心に虚なし」の理論を教えられ
ていたとすれば、心の病に関する記述に対してはそのような先入観があって、その真
意を十分に汲み取らなかった可能性もあります。そのようなわけで、今本会が心の病
の治療を再構築するに当たり、先ず会員一同にて先入観を捨てた目でこの『鍼灸聚英』の心に関する記述を改めて読んでみる事は、今後の研究のために価値あることだと思います。

 

ー以下鍼灸聚英よりの抜き書き朗読の後ー

 

①心は熱と結び付けられています。それは、各種の熱病のことです。特に、「瘧」
という病気の名前が何度も出てきます。「瘧」というのは、日本語では「おこり」
といいます。正確には、マラリアのことだと言われています。あるいは、マラリ
ア様の伝染性の熱病を指します。伝染性の熱病に対する処方は、古くから漢方医
学の重要な部分であったと思います。その熱病に対して「心、心包」の配穴が重
要な意味を持っていたことが分かります。例えば、『通玄指要賦』では、「マラリ
アで悪寒発熱したら、間使に頼って救護する。期門は、胸が血で膨らむものを治
せる。労宮は、嘔吐して心寵部の痛むものを治す。疑うなかれ。さらに心胸病に
は、手掌後ろの大陵を求める。」この中でも4つのうち3つが、「心、心包」のツ
ボで処置されています。

マラリアというと野口英世の話があるように、アフリカにあるということは
知っていました。また、戦時中に沖縄の離れ小島で流行ったことも知っていまし
たが、中国でもあったのか疑問でした。ましてや、日本でもあったのかと疑問に
思いました。しかし、日本でも流行した時期があったようです。現在、放送され
ている大河ドラマの平清盛も最後は「瘧」で死にます。また、後白河法皇も
「瘧」で死にます。マラリアは、最近まで日本の本土でも普通に見られた病気で
した。マラリアが最後に発生したのは1964年です。この流行が、本土における最後の発見と言われて
います。ですから、遠い国の病気ではなくて、マラリア原虫という病原菌は、日
本の本土にも普通にいたということです。