漢方鍼医会の脈診02

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ー医道の日本投稿 「漢方鍼医会の脈診」:平成28年9月号よりー

2.菽法脈診

菽法脈診は難経五難・十八難の記述に基づく。菽とは豆粒の重さのことであり、指の抑える重さを豆粒の重さで表現したものである。具体的には六部定位における各部の脈の有りどころの深さの基準を示したもの、と解釈している。

(1)右手寸口の三菽は肺の見所で皮毛の深さ。

(2)左手寸口の六菽は心の見所で血脉の深さ。

(3)右手関上の九菽は脾の見所で肌肉の深さ。

(4)左手関上の十二菽は肝の見所で筋の深さ。

(5)両手尺中の十五菽は腎と命門の見所で骨の深さ。

本会では初学者に早い段階でこの診脈法を教えることになっている。手をとって実際に三菽から順にその重さで抑え体で覚えてもらっている。総じて右手は左手よりも浅いところに見所があること、寸口から尺中に向かってなだらかに沈み込んでいく脈形が良い形である事を理解してもらっている。理想的な脈形にすることで治療の過程において今良い方向に向かいつつあるかどうかを判定する基準の一つとなっている。

 

3.四時の旺脈

『難経』十五難では四時の旺脈としての正常脈が説明されている。なお、四時は春夏秋冬のことである。人は自然界の中で生かされていると言うのが中国哲学の考え方である。人の体は自然界の移り変わりに従って順応しており、順応出来なければ病むのである。季節に順応する脈は旺脈が適度に混じっている脈であり、強く出ていたり弱すぎたりすれば、季節に適応できていない状態と診る。各季節の旺脈は以下の通りである。

(1)春・・春の脈を弦脈。弦脈は春の気を受けて、やや緊張感が有り、未だ浮ききれずやや沈んでいて、まだ盛大にも成れず細めの脈である。弦が著明な場合は、大過であり病脈である。逆に弦の現われ方が弱すぎれば不及であり季節に応じられずにいる脈である。

(2)夏・・夏の脈を鉤脈。夏の脈は盛大な陽気を受けて、太く力強く皮下から湧き上がるように打つ脈である。鉤があまりにも鮮明で、しかも堅さがあったり、拍動の振幅が大きすぎる場合は大過である。逆に太さと力強さが足りず、振幅が小さい場合は不及であり季節に応じられずにいることを示す。

(3)秋・・秋の脈の毛脈の毛は「毫毛」。毫毛は細く、軟らかい毛であり、堅い毛ではない。軟らかく細めでふわふわとした手触りの毛である。秋の脈は浮いてはいるものの、夏の鉤脈のような力強さは無く、細く、波形の短い脈となる。そして拍動が滑らかに来ないので、浮にして短渋と言う表現になる。この毛脈も堅さと渋りが極端になれば大過の脈であり、沈みぎみで緩んでいれば、不及の脈で季節に応じきれないでいる脈である。

(4)冬・・冬の脈の石脈は、自然界の陰気を受けて皮下に堅く沈んでいる脈であり、石ころのような丸みのある拍動である。極端に堅い場合は大過の脈であり、沈みきれず柔らかければ不及の脈で、季節に応じきれないでいる脈である。