漢方薬の副作用:補薬は胃に重い

 

一般的には漢方薬は安全で恐ろしい副作用の無いものとして認識されている傾向があります。

確かに極端な副作用は無いといえるかもしれませんが、全く副作用がないわけではありません。

漢方薬も鍼灸と同様「証」という見立てをたてて行うわけですが、その「証」が違っている。

つまり見立て違いの場合は良い効果を発揮することは出来ないのはもちろんですが、胃腸障害などの副作用が起きることがあります。

食欲がなくなる、熱やじんましんが出る、むくみ、動悸、不眠、血圧が上がる…などがありますが、ごくまれに間質性肺炎などの重篤な副作用を発する場合もあります。

やはり専門の先生に良く診断してもらった上で服用すべきものです。

 

上海では「補薬は胃に重い」と言うことを教わりました。

補薬とは補う作用を持った薬のことなのですが、量が多すぎると直ぐに胃が重たくなり胃腸障害の兆候が出るので処方量に注意せよ。

という意味です。この言葉はさらに「なかでも地黄は特に重い」と続きます。

地黄は「六味地黄丸」「八味地黄丸」という補腎薬の主薬です。

とてもよく使われる薬なのです。

 

私も上海時代は自らの勉強もかねて先生に診断して頂いて薬を飲んでいたのですが時にこうした「地黄丸シリーズ」が出てくるのです。

やはり胃が重くなって食欲が無くなります。

先生に相談すると、「次回からは地黄の量を調節するが、既に処方してもらった分は、自分で地黄の量を適宜減らして飲めばよい」と言われます。

なるほど、捨ててはもったいないですからね。

握り拳程の大きさの袋を破り、中身を皿の上にあけます。何種類もの薬剤が入っているのですが、タールのように黒くて四角いのが地黄ですので直ぐ解ります。

まず地黄だけをよって、端に寄せます。そして半量だけを取って捨て、残りを袋に戻して閉じます。

これをいつもどおり煎じて飲むというわけです。

 

中国では長く漢方薬を飲む人はこの程度の知識は結構持っていて、医者の方も気軽に指示して実行させていました。

そういった風景はさすが中国、漢方薬のふるさと也、といった感じで眺めていました。

日本だと漢方専門医といっても薬剤そのものを知らないという先生も多く、どれが地黄であるか患者に指示するどころではありません。

それは「薬剤師の仕事だ」という感覚の人もいます。

 

甘草はむくみを生じたり、血圧が上がってしまうことがあります。とくに甘草の処方量が多い芍薬甘草湯の長期服用時、あるいは複数の方剤の長期併用時に注意が必要です。

これは甘草に含まれている成分によって「偽アルドステロン症:副腎から分泌されるホルモンであるアルドステロンの分泌が正常であるにもかかわらず、あたかも過剰に分泌されている火のような症状を示すこと」という症状が引き起こされることがあります。

それは甘草には副腎に働き代えて抗炎症作用をなす働きがあるのでそのようなことが起きる事があるようだとされています。甘草はむくみや血圧上昇、尿量減少といった漢方で言う腎の働きに障害が出ることがある、といえそうです。

とはいえあまり神経質になる必要はありません。甘草はほとんどの漢方薬に入っているとても一般的な生薬です。

その名の通り甘草は甘い薬剤なのですがその甘みで「諸薬を調理する:他の色々な薬剤をうまく混ぜあわせて薬効が十分に出るようにする。」ということをよく言います。

その程度の働きを期待されて処方の最後に「ここにも甘草を入れておこうか」という感じで少量入っている、という感じです。

芍薬甘草湯以外は容量も少なめだと思います。芍薬甘草湯は筋肉の急激なけいれんを伴う痛みに効くということで、近年では主にお年寄りの慢性的なふくらはぎの引きつりがある方に処方されることが多くなっています。