心の治療:2014:心熱考察

それほどに我々が心熱に対する処方に疎かったのには理由がありました。

そもそも昭和の時代に我々が学んだ漢方医学にはなぜか「心熱」が無かったのです。

私は八十年代初頭に新宿の東洋鍼灸専門学校に入りました。そこでは小野文恵先生に鍼灸学を教わり島田隆司先生に素問の講義を受けるという大変豪華な授業を受けることができました。そして全盛期の東洋はり医学会に入会し大会議室の席に座り切れず人と犬が廊下まで溢れる熱気の中で全国の会員達に混じって脈診流経絡治療の手ほどきを受けました。さらに高円寺の新井はり灸院で五年間の実地経験を踏んだあと、上海の中医学院に入学しました。

自分はすでにそこそこ漢方医学には詳しいはずだ、という気持ちでいたのですが、そうでもないことにすぐ気づきました。

中医基礎理論を学んで耳新しかったのは「肺の宣発粛降」「肝の疏泄」「脾の統血」そして「心熱」です。

特に心の場合はそもそも、その生理病理さえまともに考えたことがないことに改めて気づきました。「神志を司る」は聞き覚えがありました。でも「心血」も「心熱」もそれまで聞いた事が無く、何だかとってつけたようなもののような気がして「心の生理など勉強しても役に立つのだろうか」とさえ思った事を覚えています。