心の治療:2014:心熱の理解は疫病との戦いの歴史から.1

その後中医学(薬方)を学んでわかったことは中国医学には心を特別扱いして弁証と治療の対象から外すというような思想がそもそも存在せず、心の治療の臨床に対する応用は他の四臟と何も変わる所はないということです。

(その時は「薬方では心に対するタブーは無いみたいだな」という中途半端な結論は得ながらもそれでは自分の鍼灸治療をどうこうしようなどという風には思いが及ばないままに帰国してきました。今にして思えばまだまだ「心に虚なし」の呪縛から解かれることはなかったのです。)

 

それはともかく。私はかねがね心の治療を理解するための早道は疫病との戦いの歴史を知ることではないかと思っています。

まず端的に心熱を知るには疫病の際高熱で苦しんでいる様子を想像すればよいのです。高熱を発し、意識混濁、人事不省、狭心症様の胸の苦しみ痛み、出血。激しくなれば痴呆、突然昏倒、最後には激しい出血と精神異常、発狂そして突然の心停止。これらは人体が心熱に急速に冒され最悪の事態に陥るまでの経過を示しています。

歴史をひもといてみれば、漢方医学の歴史は大規模で悲劇的な疫病との闘争の歴史であると言うことが出来ます。

「傷寒論」の著者張仲景はその序文の中で10年間に一族200人の中から2/3を越える死者を出した疫病を回顧し、その悲劇をくり返してはならぬと一大決心をして発憤し、古今の医方を収集してこの書を著した。と述べています。