心の治療の実際・7「血熱証」

3.血熱証
まず血熱証の定義をおさらいします。
血熱とは中医学では血の病に関わるいくつかの証の一つです。血分が熱を持った状
態、或いは熱邪が血分へと侵犯することによって出現する症候であり代表的な臨床所
見は各種出血症状(血熱妄行)です。さらには皮膚の乾燥、又、精神的な操、或いは
狂の状態、口乾などの各種熱象はもとより舌が赤、赤紫になります。
「火盛んにして妄りに出血する者はそれが上からであれ下からであれ、必ずや熱の脈
をした熱証によるのである。(『 景岳全書』血証)
「ある者は肝火が盛んなる故に、ある者は激しく怒りて肝気が逆上した故に吐血をな
す(『呂山堂類排』排血)
「血熱は・・即ち鼻血、歯の血、歯茎腫れ、舌上の出血、舌の腫れ、婦人科の下血、
血尿、生理過多(『神農本草経』気血諸病)
中医関係の資料を読んでいると古来より血熱証と言えば出血症状(血熱妄行)であ
り、また発熱による精神錯乱を治療するものである、というような印象があります。
しかし、現代日本の漢方薬治療においては血熱といえばアトピー性皮膚炎の治療への
応用が多いと言う印象があります。
中医臨床を読んでいても中国から移住してきた中医師がアトピーの治療にこの血熱
の弁証を多用してよい評判を取ることができて助かった、という記事が出ていたこと
があります。従来の日本漢方にはどうも血熱証の弁証がないのかもしれません。
血熱による皮膚炎の特徴としては強い赤色であること、炎症のあまり痛みが出るほ
どであること、皮膚からの出血が明らかであること等が上げられています。
私はそれまで血熱の原因は肝熱によるものとの認識でしたが、各種の中医の本には
心熱もまた血熱に関与しているとの指摘があります。

 

【症例3】
患者:30代女性
主訴:アトピー性皮膚炎
(望診)
身長155センチ、痩せ気味。全身が日焼けをしたように赤く、目の周囲だけが白い。
肌は乾いているが突っ張り、所々傷口が開き、血膿がでている。舌先が赤い。
(問診)
幼少期からのアトピー性皮膚炎。成人後は小康を保っていたが4年前、妊娠を期に
再発。さらに出産後悪化し炎症が全身に広がった。原因としては36時間に及ぶ難産、
引っ越しのストレス、新居の化学物質などが考えられるとのこと。ステロイド治療を
行い、小康を得る。2年後に脱ステロイドで悪化と改善を繰り返す。手足の冷えが強
く、生理は1~2 日で終わってしまうとの事。昨年は漢方薬と誠灸治療に挑戦した
が、効果は小さく信頼を無くして中断。