心の治療の実際・17「心の治療雑感 :心の瀉法が肝熱に対しても有効であるか」

5 .心の治療雑感
(1) 心の瀉法が肝熱に対しても有効であるか
私は当初は心の治療は心熱を適切に処理する治療、と考えていましたが、徐々
に肝熱の処置にも使えるのではないかとの思いが強くなってきました。
先ほどの血熱症と解釈したアトピーの症状なども肝熱に対して心の鴻法が有効
で、あったケースと言う見方をすることもできます。
そもそも『難経J六十九難の原則から言っても「実する者はその子を潟す」で
すから肝木の実に対して心火の鴻法は効果を期待できることになります。
また『難経j 七十五難の冒頭にある「東方実し、西方虚せば、南方を窯し、北
方を補う」も言葉通りに解釈すれば「肺虚肝実すれば心を潟して腎を補うベし」
となります。肝実に対して心の潟法を行うことは古来から誠灸治療で使われてい
た形跡は充分にありそうです。
(2) 季節性
心実証は季節性の強い証だと感じています。夏に多く、冬に少なくなります。
春先2月ぐらいからアレノレギーが増えるに従って心心包の治療が増えていきま
す。
「秋に乗ずれば則ち肺先ず邪を受け、春に乗ずれば則ち肝先ずこれを受け、夏
に乗ずれば則ち心先ずこれを受け、至陰に乗ずれば則ち牌先ずこれを受け、冬に
乗ずれば則ち腎先ずこれを受く。J (r 素問』咳論)
季節性と言えば梅雨時や秋の長雨の時の牌虚証、春先の肝虚症が思い浮かびま
すが、実は心実もかなり季節性があります。更年期のホットフラッシュの強い方
で「夏場は熱くて仕方がないが、秋が来て涼しくなるとそれだけで楽になってい
く。冬になるとほとんど忘れている。」という人がいます。熱証というものは日
本の様な四季のある国で、は季節に沿って盛衰を繰り返しているもののようです。
最初の腎虚と心実を繰り返す人の場合は夏期を中心に心を主証とし、冬期を中心
に腎虚へ移行するという人がいます。
(3) 陰虚との関係
心実証の多くは病理の基礎として肝腎の陰虚を持っている場合が多いもので
す。陰虚がある故に心熱が高ぶりやすいわけです。心熱を処理することはしばし
ば臨床的に高い効果を生みますが、こうした漢方理論の因果関係を見た時に、心熱の処理は標治的な位置にあることがわかります。それ故に心熱の処理だけをい
つまでも繰り返していては患者を治癒に導くことは難しいと考えています。陰を
地道に補う事で体を必要な陰液で潤し、もって心熱が高ぶらないような環境を
作って行くことが真に本治の名に値する事であろうと思います。ほとんどの患者
はある時期心の治療を主証として主訴の改善を見たならば、その後には肝腎、あ
るいは牌の陰を補う治療へと移行していくようです。
そのタイミングは脈診、腹診を注意深く行うことで的確に捉えることができる
と考えています。