心の治療の実際・13「パニック障害考察」

パニック障害を起こす人は素因として色々な問題を持っているものです。この女性
の場合は元来の牌虚の問題があるので、中焦に水湿がたまりやすくてお腹が出ている。
またその為心配性で考え出すと「こうだろうか、ああだろうか」と堂々巡りしてしま
うところがある様に思われます。急’性のパニックの症状が落ち着いたら、脾腎の陽気
の改善を目標にして治療を行うことになるのではないか、と考えています。
心虚陽虚証でのパニック障害の治療例となりました。動惇、胸苦しさ、胸痛などは
心虚陽虚でも生じますので、問診だけで虚実を判別するのは容易ではなく、やはり脈
証、腹証を見て証を正確に見極めなければいけないと感じました
実はこの方の前にも何人かのパニック障害の症例がありました。これぞ典型的な心
実証というような脈状の方でしたが、脈状の改善ほどには鮮やかな緩解を見ることが
できず、こうした心身症の治療の難しさを痛感しています。
こうした症状に対しては通り一遍の弁証だけではなく、患者と術者のコミュニケー
ションやより実際的な治療上の工夫が必要ではないかと感じている次第です。
パニック障害の中医学の治験を読むと疾飲との関連を指摘している例が多数有りま
す。その最たる者は「治療後大量に喀痰してそれ以来病状が段違いに軽くなり以後快
方に向かった」というものです。そもそも中医学には「怪病多痰」なる言葉があり、
頑疾や難病奇病の多くは痰飲が関係していることが多いという観察があります。
「一切の怪症は皆痰の実盛である」(寿世保元.1)
「痰火が異証を生じる所以である」(医学入門.1)
「痰がなければ眩は起こらない、痰は火によって起こる。(朱丹渓)
つまり、この先生に言わせればパニック障害も又怪病である、と言うことのようです。
心身症で痰がどう悪さをするかというと、胸部にたまって胸苦しさ、咽喉部を塞い
で喉の詰まり感をだし、督脈を塞いで陽気が頭に昇れない等と弁証をしてみせるわけです。
必ずしもここまで極端でなくとも「中医臨床」ではほとんどの先生が精神疾患に関
しては湿邪の影響に言及しています。「元来牌腎の虚があり痰湿を持ちやすい体質で
あり、そのため思慮過度となりこうした病気を発症・・・」とつなげてみたりしています。
痰湿は肺気の循環が悪くても、肝の疏泄が悪くても、腎の陰陽の気、三焦、膀胱の流れが悪くても起きますので長期的にはそうした五臓全体へのバランスの取れたケアーが欠かせないと思います。
この患者さんに痰は出ますかと問うと「調子が悪くなってからは痰が多くなってい
ます」と答える。吐き出す痰と言うよりもねっとりして喉に落ちていく、という言い
方をしていました。そして、ここ数週間症状の緩解と共に痰は減っているとのことで
した。
さらに「中医臨床」ではパニックであれうつ病であれ「顔がこりませんか」と聞い
てみると良いという話があります。そうすると「先生よく分かりますね」と驚かれる
という。つまり顔面や頭部にも小さな水滞ができて陽気の循環を妨げていてそれが気
欝の悪化要因ともなっているようです。そうした患者さんには顔面や頭部の経穴に施
術をすると良い結果があるようです。